12.吊るされた男


それでは、「XⅡ 吊るされた男」のカードを読み解いていきましょう。

いつものように、まず絵柄を見てみましょう。
目に飛び込んでくるのは、木に吊るされた一人の男性。左足を縄のようなもので縛られています。まるで逆立ちをしているような状態なので、男の髪は地面に向かってたなびいています。でも、こんな姿勢だととても苦しいはずなのに、男の表情はなぜか穏やかで迷いがない様子。そして、その頭の周囲は不思議な光を放っている…。

このカードは、昔の「処刑」の場面を描いたものだと言われています。男は、何らかの事情でこのような立場になってしまった様子です。

ここで皆さん。もし自分が木にぶら下げられて、何日も過ごさなくてはならなくなったと想像してみてください。
きっとすぐ頭に血がのぼるでしょう。体は痛いし苦しいし、苦痛で平静ではいられませんよね。「お願い、外してー!」と叫ぶ人だって出てくるかもしれません。

この男も、「身体的には」もちろん同じ状態です。とても苦しいはずです。
でも、決して慌てず騒がず、何かを悟ったような満足げな表情すら浮かべています。

それは、男が「精神的に」とても満足しているから
それは、自分の身が犠牲になることで、もっと大切な精神的な何かを貫くことができるから…。男は、強い使命感に包まれているのです。

このカードが出る時は、自由にならない立場や状況に置かれていることが多いはずです。それでも、精神的にはそれを受け入れ、納得している状態です。ある意味では、どこか高尚な気持ちを持っているとも言えるでしょう。

2人の関係を表す場面で出てきたならば、きっとお互いに伸びやかに恋ができる状態ではないのでしょう。それでも、2人の心はダメになっていません。今は厳しい時期だけれど、心は輝いているのです。

アドバイスカードとして読む場合には、しばらく忍耐が必要です。すぐにどうこうしようとせずに、自分の信念を持って、悪あがきせずに自分のすべきことに取り組む。厳しいようにも感じますが、人生には、ただ行動するだけでなく、そのような時間がどうしても必要な時があるのかもしれません。