私たちは自分では気づいていなくても､実に様々な形の欲望を持っています｡この欲望の中には､他の人へのねたみや性的な欲求など､自分では思わず否定したくなるようなものも多く含まれています｡そうした欲望を認めることは､自分自身の否定につながります｡
そのため私たちは欲望を押さえつけ(心理学用語で｢抑圧｣といいます)､潜在意識の中に閉じ込めてしまうというわけですね｡しかし潜在意識に閉じ込めたからといって､欲望が完全になくなるわけではありません｡むしろ地中のﾏｸﾞﾏのようなｴﾈﾙｷﾞｰとなって､心の奥底でうごめいています｡この欲望のｴﾈﾙｷﾞｰを抑圧したままにしておくことは､私たち自身にとって必ずしもいい結果を招きません｡無理に欲望を押さえつけることで逆に現実の中での感情のｺﾝﾄﾛｰﾙが困難になって､ついﾋｽﾃﾘｯｸな言動をとってしまいがちになります｡
また､最悪の場合には拒食症や心身症といった心因性の病気になってしまう心配も……｡
だからこそ私たちは､自分の中の潜在意識の声に耳を傾け､潜在意識とうまくつき合っていくことが必要なのです｡そして理性が活動を休止する夢の中は､潜在意識の活動も活発化しますから､そのﾒｯｾｰｼﾞに耳を傾ける絶好の機会といえるでしょう｡
とはいえ､夢の中だからといって欲望はｽﾄﾚｰﾄに表現されるわけではありません｡夢の中でも､ごくわずかながら理性は働いています｡この理性のﾌｨﾙﾀｰを通るので､例えばｱﾌﾞﾉｰﾏﾙなｾｯｸｽを求める人が昆虫の夢を見るなど､願望は微妙に形を変えて夢の中で表現されます｡その意味で､夢の中に登場した物や夢の中の事件がそれぞれ何を意味するのかをよく知っておくことも必要です｡

---